【感想】オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る

気になっていたオードリータン氏の著書を本屋で見かけましたので読んでみました。

35歳で台湾のデジタル担当大臣に抜擢、コロナ禍ではデジタル技術を用いたマスクの管理がニュースになっていましたね。

本書はデジタルとAIがもたらす未来について、車が空を飛びます!とかAIがこんな仕事をします!みたいな具体的な話は出てきません。どちらかと言うとデジタルやAIを使っていくにあったって、どういう考えを持っておくべきなのかというオードリータン氏の思想が書かれています。

また、台湾の国民と政府の在り方も詳しく述べられており日本も見習うべき所が多いと感じました。台湾の国民は自らの手で民主主義を勝ち取った過去があるので、政治参加にとても積極的なようです。政治も国民の声を積極的に取り込んでおり、国(政治)と国民の信頼関係が築けているようです。

 

以下、気になったところ箇条書き。

 

・5G,6Gは何を可能にするか

5G,6Gといった技術は私たちが到達できる場所を拡大するだけではなく、私たちの視野を広げてくれます。 

通信技術が上がることで、VRなどの”到達できる場所の拡大”は想像しやすい。一方で、今までの日常にデジタルをちょい足しすることで”視野が広がっていく”といったメリットも。

日頃見ている光景の中にポケモンが現れた時の感動たるや(ポケモンGO)。次元に低い話に置き換えてすみません。

 

・AIと人間の関係性は、ドラえもんとのびた

あくまで人間であるのびたが主体であって、ドラえもんはその補助をする役割。 

 

・デジタルとAIを活用した未来を描く上で、人間にとっての公共の利益をオードリータン氏は

最も重視しているようです。

よく言われる「AIに仕事を奪われる」や「デジタルについていけない人間出てきて格差が生まれる」といった状況は人類にとってマイナス。AIはあくまで人類全体が持続可能な成長を続けるためのツール。

著者ほど優秀な人物だったらデジタルやAIを使っていくらでも利益追求できそうですが、”人類がみな均等にデジタルによって豊かになるべき”という信念を第一に持っているのは、オードリータン氏の人柄がわかる気がします。一般の人とは見ているスケールが違いすぎます。

 

・デジタルと民主主義

デジタルを用いることで双方向のコミュニケーションが可能になるが、これは国民と政府にも当てはまる。これまで汲み取られなかった少数の意見が表に出てくる機会を与えてくれる。

 

蔡英文は際立って演説が上手いわけではない。現代では、自分の考え方をいかにデジタルを駆使して正しく伝えられるか(ビジュアライズ、リアルタイムではないネット上での表現etc)が重要。そして色々な意見に耳を傾ける姿勢も重視される。

 

・日本の若者はまだ公共の利益のために積極的な行動がとれていない。そして社会全体も、若者こそがこれからの社会を動かしていくんだという認識が薄い。

 

台湾の行政システムや教育はずいぶん進んでいます。オードリータン氏のような人材が出てきて、政治に関与しているという事実が台湾の先進性を表していると感じました。

日本ではつい数年前にUSBを知らない大臣の答弁が話題になっていましたが、政策面では台湾に見習うことは多そうです。