【感想】『コンビニ人間』村田 沙耶香〜平成の30冊から〜

最近は、朝日新聞の「平成の30冊」という記事の中から未読の本を読んでいます。

日頃の読書は自分の好きな著者のものばかりで偏ってくるので、まだ読んだことのない著者の本を読むのはいい試みでした。

 

 『コンビニ人間』の感想

タイトルのインパクトが強いこの小説。

コンビニ人間』から連想して、マニュアル通りにしか動けない人間の話?と思いましたが、内容は予想とは大きく離れていませんでした。

少しアスペルガー傾向のある女性がコンビニというマニュアルに固められた箱の中で生きがいを見つけるという概要ですが、小説自体の内容よりも色々なサイトに書かれているレビューの方が面白く感じます。

この女性を社会の少数派として捉えていて、もっと生き方の多様性が認められる世の中になると良いという意見や、自分も少数派だからこの女性に共感するといった意見が多いようでした。

私の感想としては、マニュアル通りの生活に生きがいを感じるこの主人公は、少数派ではなくむしろ現代の大多数の人をデフォルメ化した存在なのではないかと思います。

多くの人が、毎日同じ時間に通勤し、同じ内容の仕事をこなし、同じ生活スタイルの中で生きていて、 それが退屈と感じながらも変わらない毎日に一種の安心感を得て生活しています。マニュアルといっては言い過ぎかもしれませんが、ルーチン化された日常というのは心地が良いものです。

”多様性”という言葉がやたらと使われる現代の中で、どれだけの人が”多様性”のある生き方・働き方をできているんでしょうか。

コンビニ人間』を少数派の人と捉え、自分とは違う種類のタイプの人間だと考えている人も、根本では多かれ少なかれマニュアルの中で生きている可能性が高いのではないかなと感じます。

小説の中で主人公に対して、「○○歳なのだから結婚した方がいい」「就職したほうがいい」とアドバイスをする人間も多くいます。現実世界でさすがにこういったことを大きな声で言う人は減ってはいますが、”多様性”を重視する一方で、未だに多くの人が”人間はこうあるべき”といった固定観念を持っていることも事実です。

昭和から続く終身雇用制度の崩壊で働き方の改革が行われ、テレビでは今までマイノリティだった人々が表に出て生き生きと活躍しています。一方で、多くの人は”多様性”のある生き方とは程遠いところで、固定観念に基づいた生活を送っています。

平成とは、今までの”固定観念”と、新しくでてきた”多様性”が混在する時代なのかな、とこの小説を読んで考えさせられました。

 

 平成の30冊について

これまで未読だった、カズオ・イシグロの『わたしを離さないで』、村田沙耶香の『コンビニ人間』の2冊を読みました。30冊の選定結果についてはネットでは色々と意見があるようですが、私は今のところ概ね納得のラインナップです。

ハリー・ポッターが入っていないのはおかしいという驚きの意見も見ましたが、ある意味あれは今までにない形の小説なのかもしれません、良い意味でも悪い意味でも・・。

 

コンビニ人間 (文春文庫)

コンビニ人間 (文春文庫)

 

 

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